こんにちは。
趣味で漫画あさりとゲームをしている、くろしろです。
今回は、大人になってから読んでも非常に面白かった『あくまでクジャクの話です。』に登場する生物学について、簡単に紹介します。
この漫画の面白いところは、恋愛やラブコメだけではありません。
「生き物はなぜこんな行動をするのか?」という話が随所に登場します。
漫画を読んでいて「これ本当なの?」と気になったものを、自分なりに調べながら紹介していきます。
作品そのものの感想やキャラクター、読んで感じた魅力については、『あくまでクジャクの話です。』を実際に読んだ感想・レビューで詳しく紹介しています。
- タカ・ハトゲーム
Table of Contents
結論 攻撃的な生き物が必ず有利とは限らない
今回紹介するのは、進化ゲーム理論の「タカ・ハトゲーム(Hawk-Dove game)」です。
簡単に分けると、
- タカ派(Hawk):資源を争うとき、相手が引かなければ実際に攻撃する
- ハト派(Dove):威嚇や主張はするものの、相手が本気で攻撃してきたら引く
という2つの戦略を考えます。
面白いのは、
「タカ派の方が強いなら、全員タカ派になれば最強じゃない?」
とはならないところです。
ちなみに筆者はバリバリのハト派です。
虚勢は張れても、相手が本気で来たら普通に引きます。
例えば餌100を奪い合うとする
分かりやすく、価値100の餌を2匹で奪い合うとします。

ハト vs ハト
お互い本気では攻撃しません。
単純化して平均すると、
ハト:50
ハト:50
となります。
タカ vs ハト
タカが本気で攻撃しようとするため、ハトは引きます。
その結果、
タカ:100
ハト:0
タカの勝利です。
「やっぱりタカ派が最強じゃん」と思いますよね。
ところが問題はここからです。
タカ vs タカ
どちらも引かないので、本当に争います。
仮に勝者が100を得る一方、争いによる負傷の損失を200とします。
平均すると、
(100-200)÷2=-50
となります。
つまり、
タカ vs ハト → タカが有利
ハト vs ハト → 大きな損失を避けられる
タカ vs タカ → 大きな損失が発生する
という関係になります。
タカ派だけになればいいわけではない
ここが私が面白いと思ったところです。
タカ派はハト派を相手にすると有利です。
しかし、集団全体がタカ派になってしまえば、今度はタカ派同士で争う機会が増えてしまいます。
逆にハト派ばかりなら、大きな争いは起こりにくいものの、そこへタカ派が入ってくると資源を奪われやすくなります。
条件によっては、こうした違いによって複数の戦略が集団の中で維持されることがあります。
単純に、
「強い=生存競争に勝つ」
ではないわけです。
生き物は攻撃的な方が有利とは限らない
もう一度まとめると、
タカ×ハト → タカが得をする
↓
タカが増える
↓
タカ×タカが増える
↓
争いによる損失も増える
↓
攻撃的な戦略だけが常に有利とは限らない
という考え方です。私はここがかなり面白かったです。
『あくまでクジャクの話です。』本編ではどう使われた?
『あくまでクジャクの話です。』では、昔の不良仲間との関係を切れずにいる生徒に対して、主人公の阿加埜が「ハト派」という言葉を使って説明する場面があります。
その生徒は不良仲間に対して強気な態度を取ることはあっても、本当に相手が強く出てくると引いてしまう。
そこで阿加埜が、生物学で使われる「タカ・ハトゲーム」に例えて説明します。
簡単にいうと、
ハト派=威嚇や虚勢は張るけれど、本格的な争いになりそうなら引く
という戦略です。
私はこの場面を読んだとき、
「人間関係を生物学で説明するとこんなに分かりやすいのか」
とかなり印象に残りました。
単純に「気が弱い」「喧嘩ができない」という話ではなく、争いによる損失を避ける一つの戦略として説明されているのが面白いところです。
「最初、タカ派でも1度負けるとハト派になる」という話も非常に納得してしまいました。
現実世界で負ける相手に繰り返し行けるのはスポーツ位です。実際の喧嘩で負けた相手に突っ込むのは次は何をされるか分からないという恐怖まであります。
漫画なのに自分の生き方まで考えてしまった
私自身、これまでスポーツなどで、
「失敗したらどうしよう」
と考えすぎて緊張し、本来の力を出せなかったことが何度もあります。
そのため、ある時から失敗を恐れて動かないくらいなら、思い切って挑戦しようと考えるようになりました。
ただ、『あくまでクジャクの話です。』を読んでいて面白いと思ったのは、
「積極的に攻めれば、何でも有利になるわけではない」ということです。
攻めることが有効な状況もあれば、争いを避けた方が結果的に得をする状況もある。
生き物の行動を単純な「強い・弱い」だけでは説明できないところに、生物学の面白さを感じました。
エピソード2 ゾウアザラシ 戦わないことも生き残るための戦略?
タカ・ハトゲームの話と合わせて、もう一つ印象に残ったのがゾウアザラシの話です。
ゾウアザラシと聞くと、大きな体をした動物というくらいのイメージしかありませんでした。
しかし本作では、ゾウアザラシのオス同士の関係を、人間関係に当てはめて説明する場面があります。
ここでも、「強い=いつでも戦う」
という単純な話ではないところが面白かったです。

本編では不良グループから抜けたい鷹垣の話
この話の中心になるのが鷹垣です。
鷹垣は中学生の頃にやんちゃをしており、高校生になってからも昔の不良仲間との関係が続いていました。
ただ、本人はもう昔のようにやんちゃをしたいわけではありません。
「本当はグループを抜けたい。でも昔の仲間を裏切ることもできない」
という状態です。
そこで校長先生から頼まれた久慈先生が、鷹垣に昔の仲間との関係を断つよう促します。
しかし、鷹垣としては昔から付き合ってきた仲間。
簡単に「今日から関わりません」とはいきません。
なかなか話がまとまらない中、動き出すのが阿加埜です。
久慈先生との時間を奪われたくない阿加埜

阿加埜が鷹垣を助けようとする理由が、またこの作品らしい。
久慈先生が鷹垣の問題に時間を取られている。
つまり、
久慈先生と自分が一緒にいられる時間が減る。
阿加埜にとっては大問題です。
そこで、先ほど紹介した「タカ・ハトゲーム」などの話を使って鷹垣を煽り、問題をさっさと解決するために不良仲間のたまり場へ向かいます。
そして鷹垣は、昔の仲間たちを前にして、
「グループを抜ける」
という意思を伝えます。
もちろん、それですんなり終わるわけではありません。
リーダー格との対立でゾウアザラシが登場

鷹垣が抜けようとしたことで、グループのリーダー格と対立します。
話がこじれていく中で、リーダー格は阿加埜を気に入り、
「阿加埜を渡せば許してやる」という趣旨の要求をします。
ここで普通なら、
「ふざけるな!」
と喧嘩になりそうな場面です。
しかし、阿加埜は違います。
ここで突然、ゾウアザラシの話を始めます。
本当にこの漫画は、生物学をぶっ込んでくるタイミングが面白い。
ゾウアザラシのオスは激しく争う
ゾウアザラシの世界では、繁殖をめぐってオス同士が激しく争います。
体が大きく強いオスが優位に立ち、多くのメスとの繁殖機会を得ることがあります。
一方で、すべてのオスが強い個体に正面から挑み続けるわけではありません。
自分より圧倒的に強い相手と戦えば、大きなケガをする可能性があります。
場合によっては繁殖どころではなくなってしまいます。
だから、
「戦わない=弱い」とは単純に言い切れません。
争いを避けることで自分の生存確率を高めたり、別の繁殖機会を狙ったりすることも、一つの戦略として考えることができます。
作中では「今は戦わないだけ」という話に

ここからが『あくまでクジャクの話です。』らしいところです。
作中では阿加埜が、トップに正面から挑まない個体について、
「ただ弱いから戦わないのではなく、今は争いを避けて機会を待っているのでは?」
という趣旨の話をします。
つまり、
今はリーダーに従っている
↓
だからといってリーダーを心から慕っているとは限らない
↓
リーダーが弱ったら立場を奪おうとするかもしれない
という考え方です。
そして阿加埜は、この話を目の前の不良グループに当てはめます。
阿加埜は生物学を使って仲間割れを狙う

不良グループのリーダーからすれば、周りにいる仲間は自分についてきている人間です。
しかし阿加埜の話を当てはめると、
「本当にあなたを慕っているから従っているの?」
という疑問が生まれます。
今はリーダーが強いから従っているだけ。
もしリーダーが弱ったら、その立場を狙う人間が出てくるかもしれない。
阿加埜はゾウアザラシの話を利用して、グループの中に疑いを生じさせようとします。
ここが面白い。
生物学の知識を読者に説明するだけではなく、その知識を使って実際に物語を動かしてしまうんです。
「そのバットは飾り?」とさらに煽る阿加埜
しかも阿加埜は、それだけでは終わりません。
リーダー格をさらに煽り、ついには阿加埜自身へ攻撃が向かいます。
そこで阿加埜をかばったのが鷹垣でした。
自分の意思で昔の仲間と決別し、阿加埜を守る。
この一連の流れによって、鷹垣の問題も一つの区切りを迎えます。
そして個人的に面白かったのが、リーダー格の行動です。
阿加埜のゾウアザラシの話を踏まえて考えると、トップであり続けるためには周囲を力だけで押さえつければいいわけではありません。
仲間を必要以上に痛めつけたり、敵を作り続けたりすれば、
「こいつをリーダーから引きずり下ろしたい」
と思う人間が出てくるかもしれません。
逆に周囲を大事にすることが、自分の立場を守ることにつながる場合もあります。
強いから攻撃する。
ではなく、
強い立場を維持するために、あえて攻撃しない。
これも一つの戦略なのだと考えると、見方が変わってきます。
※ゾウアザラシの生態と作中の表現は分けて考えたい
ここは少し注意が必要です。
『あくまでクジャクの話です。』では、生物の行動を人間関係に当てはめることで、非常に分かりやすく描かれています。
ただし、
「ゾウアザラシの弱いオスは、トップが失脚するのを待って必ず後釜を狙っている」
とまで単純化して考えるのは違うと思います。
実際の動物の行動には、個体差や体格、年齢、繁殖機会などさまざまな要因があります。
そのためこの記事では、
実際のゾウアザラシの生態と、
漫画の中で人間関係を説明するために使われた表現
は分けて考えています。
私はむしろ、そこも含めてこの作品の面白さだと思っています。
生物学をそのまま教科書のように説明するのではなく、
「この生物の行動を人間に当てはめたらどうなる?」
と考えさせてくれる。
だから読んだ後に、自分でも調べてみたくなるんですよね。
この作品を書いている作者の方は本当に天才だと思います。
タカ・ハトゲームとゾウアザラシに共通して感じたこと
今回紹介した2つの話には、共通する部分があるように感じました。
タカ・ハトゲーム
→ 攻撃的な戦略が常に有利とは限らない。
ゾウアザラシ
→ 戦わないことが、単純に弱さを意味するとは限らない。
どちらにも、
「強い者がひたすら攻撃すれば勝ち続けられる」
という単純な世界ではない面白さがあります。
戦う。
引く。
待つ。
相手との関係を維持する。
状況によって有利な行動は変わります。
『あくまでクジャクの話です。』を読んでいると、人間も生き物の一種なんだと改めて感じます。
もちろん、動物の行動をそのまま人間に当てはめることはできません。
それでも、
「なぜこの人はこんな行動をするんだろう?」
と考える一つの材料にはなる。
恋愛漫画を読んでいたはずなのに、気付けば生物の行動や人間関係について考えている。
これが私が『あくまでクジャクの話です。』を面白いと思う大きな理由です。
まとめ
漫画を読んでいただけなのに、最終的にこんなことまで考えてしまいました。
『あくまでクジャクの話です。』には、このほかにも生き物に関する興味深い話が登場します。
今回は「タカ・ハトゲーム」を紹介しましたが、作品自体の面白さや阿加埜と久慈先生の関係について知りたい方は、『あくまでクジャクの話です。』の感想・レビューはこちらもどうぞ。
面白いテーマを見つけたら、この記事に随時追加していきます。












