『お求めいただいた暴君陛下の悪女です』で、ラースの復讐と同じくらい気になるのが、ゼフォンの感情の変化です。
最初は、人を使えるかどうかで判断する冷酷な皇帝という印象でした。
ところが、物語が進むとラースを心配し、花を贈り、小さな傷にも動揺するようになります。
それでも、簡単に甘い恋愛にはならない。
私は、この少しずつ変わる関係が好きで、9巻まで飽きずに読めました。
今回は、ゼフォンがラースを特別視するようになった理由と、二人の関係の変化を考察します。
※この記事には単行本1〜9巻のネタバレが含まれます。ゼフォンの感情については、作中の行動をもとにした私の解釈も含みます。
作品全体の登場人物や相関図は、『お求めいただいた暴君陛下の悪女です』完全ガイドで紹介しています。
Table of Contents
結論|ラースへの関心が「失いたくない」という気持ちに変わっていく
私の解釈では、ゼフォンがラースに惹かれたのは、自分の力で価値を示し、皇帝の隣に立とうとする女性だったからです。
ゼフォンは女性に対し「少し脅せば簡単に心が折れる」と2巻で明言しています。
そう思っていた中、ラースは全てをはねのけて行きます。
嫌がらせには反撃し、外交では利益を生み出し、必要な場面では自ら戦います。
ゼフォンの権力に頼るだけでなく、ゼフォンにとっても必要な存在になろうとする。
最初は、その能力や予想外の行動への関心だったのでしょう。
しかし、白鯨船ではラースが傷ついたときの反応を見ると、次第に能力だけでは説明できない感情が見えてきます。
「役に立つからそばに置きたい」から、「傷ついてほしくない」へ。
この変化が、ゼフォンとラースの関係を面白くしていると思います。
2〜3巻|ゼフォンに守ってもらうだけではないラース
嫌がらせに直接反撃する姿が興味を引く
2巻では、第4夫人から嫌がらせを受けたラースが、相手へ直接反撃します。
ただ耐えるわけでも、皇帝に助けを求めるだけでもありません。
ゼフォンにとっては、予想外の行動をする女性だったのでしょう。
ただし、この段階のゼフォンは、ラースのために何でもしてくれるわけではありません。
夫人には国家間の貿易に関わる役割があり、簡単には排除できないと説明します。
そこでラースは、自分がそれ以上の価値を示す道を選びます。
このやり取りを見ると、二人の関係は最初から恋愛だけで動いていません。
互いに相手の能力を見極める、緊張感のある関係だったと思います。
皇帝の子を授かるより、自分の力で地位を築く
3巻では、ゼフォンがラースに、自分の子を授かれば地位を固められると持ちかけます。
しかし、ラースはその場にとどまらず、ユレイネ国王の襲撃を阻止するために動きました。
炎の魔力で国王を救い、その後の交渉でシャリオルトに利益をもたらします。
私は、この場面がラースらしくて好きです。
皇帝に選ばれたことだけを、自分の価値にしない。
自分が何をできるのかを、結果で示す。
ゼフォンにとっても、ラースは庇護する相手ではなく、自分の隣で力を発揮できる相手になっていったのではないでしょうか。
3巻では身体の関係も進みますが、それだけで二人が恋人のようになったとは感じません。
身体の距離と、心の距離が同じ速度で縮まらないところも、この作品の特徴です。
むしろ、ラースは様子見をしている。
4巻|シングとの春祭りに見えるゼフォンの独占欲
4巻では、ラースが従者シングと春祭りへ出かけようとします。
それに対するゼフォンの反応は、少し不満そうに見えました。
ラースとシングの間には、恋愛とは異なる信頼関係があります。
それでも、ラースが自分以外の男性と祭りへ行くことは、ゼフォンにとって面白くないのでしょう。
私はここに、嫉妬や独占欲のような感情を感じました。
ただし、これをもって「ゼフォンが恋心を自覚した」とまでは断定できません。
ラースを気に入っていることと、その気持ちを本人が恋愛として理解していることは別です。
それでも、能力を評価するだけなら、誰と祭りへ行くかまで気にする必要はありません。
ラース個人への関心が強くなっているように読める場面でした。
5巻|回復魔法と大量の花が、言葉以上に伝わる

私がゼフォンの変化を強く感じたのは、5巻です。
白鯨船を守るために戦ったラースは、重傷を負います。
そこでゼフォンは、ラースへ回復魔法を使いました。
他人に回復魔法を使わないとされるゼフォンが、ラースを救うために動く。
もちろん、有能な皇妃を失いたくないという判断もあるのでしょう。
しかし、それだけでは説明しきれないものを感じます。
さらに療養中のラースには、ゼフォンから大量の花が届きます。
助けるだけでなく、その後も気にかけている。
冷酷な皇帝という最初の印象から考えると、大きな変化でした。
この作品は、ゼフォンが甘い言葉を並べないからこそ、こうした行動が印象に残ります。
私は、はっきり好きだと言われるよりも、この不器用な変化の方が気になってしまいます。
ラースも「隣に立つ相手」として認められようとする
一方、ラースが求めるのも、単なる褒美ではありません。
ゼフォンと共に力を手に入れ、唯一無二の正妃として認められようとします。
ゼフォンに守られることだけを望まず、自分もゼフォンを支える。
だからこそ、二人の関係には恋愛と政治の両方が重なっています。
皇帝と皇妃として必要な相手であり、個人としても気になる相手。
この重なりが、二人の関係を単純な溺愛ものにしない理由だと思います。
単純に気に入られたいじゃなく全てを手に入れるために動く!!!
7巻|小さな傷への動揺と、抱きしめる姿
7巻では、ゼフォンがラースの指にできた小さな傷にも動揺します。

5巻のように命に関わる重傷ではありません。
それでも気にしてしまうところに、ラースへの感情がさらに表れているように感じました。
また、同じ部屋で過ごした際に、身体を重ねるのではなく、ラースを抱きしめる場面もあります。
私はここを、ラースの存在そのものを求めるようになった描写として読みました。
欲望や利益だけなら、それまでの関係でも満たせたはずです。
それでも抱きしめる。
言葉が少ないゼフォンだからこそ、その行動に意味を感じます。
バングルの贈り物にも距離の変化が表れる
ヴェルソ王国では、ゼフォンがラースに街を歩くことを提案し、バングルも贈ります。
ラースにとっては、秘書官を探すための訪問です。
しかし、その合間に二人で過ごす時間が生まれる。
仕事や政治の目的がある中に、少しずつ個人的な関わりが入り込んできます。
ゼフォンの変化は、急に別人のように甘くなるものではありません。
これまでしなかったことを、ラースにはするようになる。
私は、その積み重ねが面白いと思っています。
8〜9巻|優しくなったと思っても、簡単には甘くならない
8巻では、ゼフォンがラースに、顔を見たくなったと伝える場面があります。
普段のゼフォンを考えると、かなり素直な言葉です。
「ついにデレた?」
と思いました。
ところが、その後にはラースが持つ、次に役立つ情報の話が続きます。
甘い雰囲気になりそうで、完全にはならない。
このあたりが、いかにもゼフォンらしいです。
ラースを特別に思う気持ちと、皇帝として彼女の能力に期待する気持ちが、両方あるのでしょう。
ラースも優しさを素直には受け取れない
9巻では、ラース自身もゼフォンから特別に扱われていることを感じています。
ただし、そこで安心して恋愛に浸るわけではありません。
恥じらいながらも、うぬぼれてはいけないと自分を律します。
ラースは、家族に尽くして裏切られた経験を持っています。
だから私は、優しくされたからといって、すぐに相手へ自分の幸せを預けられないのだと思っています。
けれど、愛されることだけを頼りにはしたくない。
この慎重さがあるから、二人の関係はゆっくり進むのでしょう。
愛なのか?目的なのか?いずれにしても着地点が気になります。
ゼフォンの変化を整理すると
| 巻 | 主な描写 | 私が感じた変化 |
|---|---|---|
| 2〜3巻 | 反撃や外交で価値を示すラースに関心を持つ | 能力と予想外の行動への興味 |
| 4巻 | シングとの春祭りを気にする | 嫉妬や独占欲のような感情 |
| 5巻 | 回復魔法を使い、療養中に花を贈る | 傷ついてほしくない相手への変化 |
| 7巻 | 小さな傷への動揺、抱擁、バングル | ラース個人への思いが行動に表れる |
| 8〜9巻 | 会いたいという言葉や特別な扱い | 好意と皇帝としての期待が重なる |
※右列は私の解釈です。恋心を自覚した巻や瞬間を確定する表ではありません。
私の感想|簡単にデレないから、行動の変化が気になる
私は、恋愛だけで話が進む作品よりも、人物それぞれに目的がある作品が好きです。
ラースには復讐と、自分の人生を取り戻す目的があります。
ゼフォンには、皇帝として国を動かす立場があります。
その二人が、互いの能力を認めながら、少しずつ個人としても惹かれていく。
だから、恋愛の場面も物語から浮かずに楽しめるのだと思います。
特に好きなのは、ゼフォンが優しくなっても、皇帝としての考え方まで消えないところです。
ラースも、守られるだけの女性にはなりません。
互いに自分の目的を持ったまま、相手が特別になっていく。
この関係がどう変わるのか気になって、私は読み続けています。
作品全体ではラースの活躍が目立ちますが、ゼフォンの小さな反応を追って読むと、違った面白さがあります。
ラース自身の魅力については、ラースの人物解説でも詳しく紹介しています













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